SHILISUのすとれーじぼっくす

詩、文章。日記。書いてる人は適応障害。抑うつ状態で休職してましたが復職しました。

☆妄想日記☆汐さんの5月8日①

 生きるというか、生活することの苦しさを、なぜか今頃になって噛み締めている。「これが大人になることか」などと考えるが、何をどう思い起こしても、あの頃と同じで、あたしがあたしであることに何の変わりもない。

 いつから「大人」と「こども」の間を通過したのだろう。そこには「区切り」などなく、曖昧なグラデーションでいつの間にか赤から青に変化したようだ。振り返ると紫やピンクの地点があった気がする。でも赤から青の間にピンクはあるのか?

 電車に乗っているとそんなことをよく考える。乗っているうちに、いくつかの分かれ道と乗り換えを経て移動できるからかも知れない。車の運転とは違う、不思議だ。経路を考えて目的地へと到着することは変わらないのに。レールとタイヤで何が違うのだろう。

 昨日の終業時点で「明日は休もう」と勝手に決めて、有休を取った。なんとなく電子申請で休みの取れる業種で良かったと思う。休む理由なんて思いつかなかったから。ただ、いつもと同じ時間に起きて、準備をして、いつもよりラフな格好で、都心へと向かうのとは逆の電車に乗った。

 緑の分量が多くなる車窓に、大学時代の空気の匂いを感じた。

 

 思い立って降り立った駅は、通っていた大学の最寄りだった。

「懐かしぃー」

 独り呟いて、改札を抜ける。

 

 駅前の本屋で本を買う。すでに数冊持っている本だ。吉本ばななの「キッチン」。ふと読みたくなって手元にないと落ち着かなくなって買ってしまって、部屋に帰ると二冊に増えている。そうやって増えた「キッチン」は、読書の趣味の合う友人に布教と称して進呈する。これで何冊目だろうか。見慣れた表紙に苦笑が漏れた。次は誰に布教活動をしようか。