SHILISUのすとれーじぼっくす

詩、文章。日記。書いてる人は適応障害。抑うつ状態で休職してましたが復職しました。

☆散文☆赤い飴ちゃん

赤い電気スタンドを買った。
実習の帰りに、少し寄り道をしていつものカフェハウスで珍しく紅茶を頼んだ。
注文をとりにきた見慣れたアルバイトのお姉さんは少し以外そうな顔をしたが、「ミルクかレモンをおつけしましょうか?」の問いに「いいえ、ストレートでお願いします」と答えるとまるで「そうですよね」というように微笑えまれた。
喉の奥に石鹸のような香りのアールグレイ。なみなみとティーカップの縁まで注がれたコハク色は、いつもより少し柔らかな花の匂いがして、レモンジンジャーのケーキのほろ苦い果肉と相性が良かった。
やたらゆっくりと紅茶とケーキをたいらげて窓を見ると既に日が落ちていた。
会計でお姉さんのくれた縁日の割引き券に浮かれてぶらぶらと街灯の下を歩いていると、古雑貨屋の店先に出ていた赤い電気スタンドが目に入った。
そういえば電気スタンドが欲しかった。
……。
眺めていたら躊躇いがちに「いらっしゃいませ」の声がかかった。
まだ日の浅いアルバイトらしいお姉さんは店にある電気スタンドを全て引っ張り出してくれた。
あれこれ迷い、お姉さんと親睦を深め、結局の始めの赤い電気スタンドを買った。
「またいらして下さい」
不馴れなようなお姉さんの笑顔と赤い電気スタンドの重さが清々しかった。

後日、大切な持ち物には名前をつけようと、この赤い電気スタンドに名前をつけた。

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あれから、15年。
赤い飴ちゃんは、毎晩あたしの夜を照らす。