SHILISUのすとれーじぼっくす

詩、文章。日記。書いてる人は適応障害。抑うつ状態で休職してましたが復職しました。

創作

☆SS☆鏡の上の波 チョコチップクッキーは

鏡の上の波 「‥‥難しい」 鉛色に青光りする波を眺めながら、小さく呟いた。 船は小さな島島を渡り、今、あたしは帰郷のための船に乗っていた。 帰路の安堵感なのか、旅の疲れなのか。眠いのか、ダルいのか、そんなよくわからないような状態で、あたしは海を…

☆SS☆ 人魚の涙

人魚の涙 なぁ秀孝、人魚の涙って見たことあるか? それって真珠のこと? そうだな、普通はそうだよな? 違うの? ‥いや、あってるんじゃないか? ‥‥? 夢、見たんだよ ‥夢?どんな 俺は海の中にいて‥魚なんだ ‥圭祐が魚なの? あぁ、きっと熱帯魚かなんかだ…

☆SS☆雨降り 7/18

雨降り 雨の強さに、空が白くけぶる夏の夜。 物干しに少年が一人、雨を避けながら読書に耽っていた。 ‥‥英和(えいわ) と、そこに現れた新たな少年、手には湯気を立てるカップを二つ。 ‥東洋(はるひろ)、何処から入ったのさ 勿論、玄関からさ、ついでにキ…

☆SS☆南のオーロラ

南のオーロラ 亜熱帯。 何処までも続く、白い砂浜。遠浅な海岸故に広がる、だだっ広い、スペアミントの海‥‥。 初夏の日射しが降り注ぐ窓辺に、白いリネンのカーテンが爽やかにゆれる。 籐の椅子に座った少年は、読んでいた雑誌を膝におき、窓の縁に腰掛けて…

☆創作☆青い蜘蛛1-1 と1/13

「青い蜘蛛1-1」 朝日が眩しい夏の日に、白い壁の家に青い蜘蛛は巣を張りました。出窓のフラワーボックスに並べられたクリサンセマムの緑と白い壁の対比が気に入ったのです。クリサンセマムに集まる虫たちは青い蜘蛛の生活に欠かせませんし、陽当たりも適当…

☆創作☆焚き火とコイン 12/20

吐く息が凍って 軽い渦をまく 寒くて凍えて 小さくおこした焚き火 君の睫にけぶるオレンジ ここから逃げるか ここに留まるか 僕が投げたコインは火に落ちて 青緑の炎をあげる コインの結果はわからなくて 君は笑って言ったんだ 「あたしは逃げる」 「あなた…

☆創作☆ヴァイオレット と眠れぬ夜は熱中症のせい

痺れている。 右足、右腕。 キツい。 脱水も感じる、、、。 目が覚めちまった午前1時半、無理矢理寝たけど、また、起きた午前2時。 水分だけじゃ足りないな、とスポドリをつくる夜中。 あー、部屋の中でだって熱中症(中でも「熱疲労」)になりやすいあた…

☆創作☆クロ(Another Story)

2006年4月19日「クロ」 少し飲んで帰った夜、アルコールのせいで耳は無音に敏感で、静かすぎて、きっと耳が聞こえないんじゃないかと思った。あんまり寂しいんで押し入れを開けた目をこらして押し入れのスミを見たらクロの目がピカピカしていた呼びかけるで…

☆創作☆クロ4(End)

引越しの前日、部屋で過ごす最後の夜に、電気を消して布団に入ろうとして、ふと思い立って押し入れの襖を外した。部屋の中は暗く、指先が見えにくかったが、押し入れの奥はさらに暗かった。引越し前のなにもない押し入れの奥、一番暗い隅に、クロはじっとし…

☆創作☆クロ3

先日、寝る前に、あまりの暑苦しさに押し入れから扇風機を出した。電気も消えて、月明かりの下、猫が喉を鳴らすような扇風機の羽根の音を聞きながらとりとめもないことを考えていた。ふと、視界を走るものがあるのに気づき、視線を右斜め上にずらすと、押し…

☆創作☆クロ2

今夜は痛いほどの無音、総てが眠りにつくなか、あたしだけが起きている。そんな気になった。あたしの刻む時だけが、なんだか異質なようで、少し不安になる。瞼の裏には、なぜか鮮やかな青空、冴冴としてますます目が覚める。押し入れからクロが覗いているよ…

☆創作☆クロ1

押し入れの中に、黒い丸い、何だかわからないモノが住んでいるのに気がついた。 影か何かと思ったので押し入れに光を入れた。すると、どこかに必ずできる、影に隠れて消すことができない、やはり影ではなく、幻覚でもないようだ。そして居場所を小さくしたこ…

☆創作☆改 天使のくれたもの6(いったん休み)

「天使」の話が聞きたくなった僕は、少年に聞いてみた。「天使ってどんなんだい?」「天使はね、ぼくらのすぐ近くにいてね、ときどきイタズラしたり、ステキな夢を見せてくれたり、いろんなことをするんだ。」 足下の影に潜む、白い5枚の花びらを撫でながら…

☆創作☆改 天使のくれたもの5

「天使の卵なんだ。」「卵?」「うん。たくさんの小さな結晶がキラキラ光ってる石。カミナリの夜に卵がわれて、雲の中で天使になるんだ。」 少年の眼差しに相手をからかうような意図は感じられない。まだ幼い少年なのだから、少年は本気なのかもしれない。「…

☆創作☆改 天使のくれたもの4

少年は僕の手を握ったまま公園をぬけ、大通りへと引っ張っていった。僕は黙ってついていく。 陽の落ち着く時刻のはずだが、期待に反し陽は容赦なく降り注いだ。足下からはジリジリと熱が襲ってくる。街路樹の丸い葉は濃い影をつくり、アスファルトの上の黒曜…

☆創作☆改 天使のくれたもの3

視線が不躾すぎたのか、少年は不思議そうに小首を傾げた。あわてて視線を瓶に移した。ラベルに見覚えがある。夏がくるたびにあかねが飲んでいたものだ。「これはね、夏だけの飲み物なの」いつでも手に入るのに、そう言って決まって夏の暑い日にしか口にしな…

☆創作☆改 天使のくれたもの2

頬に冷たさを感じて瞼を開けた。いつの間にか寝入っていたらしい。目の前には、7、8歳の少年がいた。彼は少し前屈みになり、こちらに視線をあわせながら微笑んだ。水滴を弾く瓶を手にしている。 「ごめんね、遅れちゃった」 言いながら、瓶の栓をあけ、こ…

☆創作☆改 天使のくれたもの1

あかねがいない。 もう探し始めてどのくらいになるだろう。彼女の部屋、彼女の好きな公園のベンチ、一緒に行った白い砂の海岸。思いつく場所はどれも探したけれど、彼女は見つからなかった。 正午を少し過ぎていた。アスファルトに降る夏の陽射しは白く照り…

☆SS☆ラベンデル(改)

昔々、タンポポ野原に世にも珍しい紫のウサギが住んでいました。 親も兄弟もみんな普通の茶色のウサギでしたが、そのウサギだけが紫色でした。 当然ウサギはみんなに嫌われて、とうとうタンポポ野原を追い出され、独りでとぼとぼ森を奥へと、自分の居場所を…

☆SS☆溶けない睫毛

「龍がくるよ」 唐突に垂れ込めた暗雲を眺めて、少年が言った。 「‥‥それって雨が降るってコト?」 訝しげに聞くあたしに、少年はコクリと頷く。 ‥‥あたしは、不思議なことに、見知らぬ少年と、海岸へと降りる階段の中程に並んで腰掛けていた。 「雷はね龍の…

☆散文☆赤い飴ちゃん

赤い電気スタンドを買った。 実習の帰りに、少し寄り道をしていつものカフェハウスで珍しく紅茶を頼んだ。 注文をとりにきた見慣れたアルバイトのお姉さんは少し以外そうな顔をしたが、「ミルクかレモンをおつけしましょうか?」の問いに「いいえ、ストレー…

☆散文☆人魚姫

人魚姫が声の代わりに地を歩く二本の足を手に入れたように。 エラが、鰭が手に入るなら、この声を失ってもいい。 くねった円を描きながら都心を走る路線は、いつもより何故だか揺れが激しかった。 いわゆる「ドア付近」に立っていたあたしは、昼の眩しい太陽…