☆SS☆雨降り 7/18
雨降り
雨の強さに、空が白くけぶる夏の夜。
物干しに少年が一人、雨を避けながら読書に耽っていた。
‥‥英和(えいわ)
と、そこに現れた新たな少年、手には湯気を立てるカップを二つ。
‥東洋(はるひろ)、何処から入ったのさ
勿論、玄関からさ、ついでにキッチンと材料を借りて、ホットシトロンを作った。飲まないか?
もらうよ
新たな少年‥‥東洋の手渡したカップからは温かな黄色の湯気と、ほんのり香る蜂蜜の香りが見えた。
英和、風邪だろう?てっきりベッドで寝ているものだと思ったよ
あぁ、最近の暑さが嘘みたいに今日は涼しいから、外に出たんだ
だけど、それじゃますます酷くなるだろう?
そうだな、たぶん
たぶんてことはないだろう。寝ていろよ
東洋の苦笑にゆっくり微笑むと、英和は「もう少しだけ」と呟いた。
‥‥‥‥
少年二人して何も語らず、ぼぉっと、外を眺めていた。
こんな雨の日は、土の匂いが、砕けた雨粒に乗って、普段より強く薫るんだ
そうだな
音も何だか少し違って聴こえる
雨上がりは空気が澄むしな
何だか嬉しくて、こんな雨の時は、外に出たくなるんだ
そうか
あぁ
‥‥だからって、いすぎじゃないか?
そうだな
互いに笑って、部屋へと戻る二人。
物干しにおかれた鉢植えの葉の裏に、ひっそりと黒い蝶が羽を光らせていた。
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高校生の時の発想は素敵ですが、いい感じに厨二病ですね。