SHILISUのすとれーじぼっくす

詩、文章。日記。書いてる人は適応障害。抑うつ状態で休職してましたが復職しました。

☆SS☆南のオーロラ

南のオーロラ

 

亜熱帯。

何処までも続く、白い砂浜。遠浅な海岸故に広がる、だだっ広い、スペアミントの海‥‥。

 

初夏の日射しが降り注ぐ窓辺に、白いリネンのカーテンが爽やかにゆれる。

籐の椅子に座った少年は、読んでいた雑誌を膝におき、窓の縁に腰掛けている少年に向かって口を開いた。

 

‥‥なぁ戒(カイ)

ん?

オーロラが見たい

‥それは、また、唐突。何でまた?

‥‥見たいから

オーロラなんて、極付近まで行かないとムリだろ

それが、これ見てみろよ

‥‥へぇ、嵐(ラン)はこんな雑誌を読むのか

冷やかしはいらないよ、いいから読んでみろよ

‥‥へぇ、「南のオーロラ」

見てみたくないか?

‥‥‥そうだな、やってみるか?

あぁ

 

その真夜中、少年たちは海へと急いだ。

 

嵐、ちゃんと持ってきたか?

あぁ、もちろんバッチリさ。

 

少年たちが用意したのは、ゴムボートと綱、懐中電灯に熱いショコラの入った水筒、小さな瓶だった。

桟橋に綱でボートをつなぐと、波にまかせて海岸を離れた。

 

戒、何かにぶつかったりしないかな?

全く、嵐は臆病だな、ほら、この海はずっと砂浜が続くじゃないか

‥気になっただけだよ

‥そうか‥‥

笑うな

笑ってなんかないさ、ほら、もうそろそろいいんじゃないのか?

あぁ、そうだな

 

少年はカバンから懐中電灯を取り出すと、チラチラと水面を照らした‥‥

 

‥‥‥戒

‥へぇ、綺麗だな

あぁ

 

懐中電灯の光に呼応するように、波間にシラジラと蒼く光る波があった。

波の動きと共にたゆたうその光の帯は、浅い海のその奥までレースのように拡がり、まるでホンモノのオーロラのようだった。

 

‥‥蒼いオーロラか

あぁ

たまには嵐の変な趣味も役に立つじゃないか

「変な」は余計だよ

そうか?それより、ショコラを飲もう

そうだな、少し寒い

 

ゆらゆらと光の踊る波の上、甘いショコラの香りが漂った。

少年たちの持ち帰った瓶の中には、海水と少しの砂、キラキラと光る粒が漂っていた。

 

 

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高校生の時にだか、書いた創作ですね。

手直し全く入れずに載せておきます。

パソコンに何やらあと数作残っていたので、ちょいちょい載せておこうと思います。