2021-02-20 ☆詩☆水中夢 詩 音の少ない時間は、水の中にいるような気持ちになる。まるで水族館の魚になったように。そうでなければ温かい手のひらで両耳をふさがれているような。そんな気持ちになる。水の中で息ができて、喉の奥からぬらりと気泡がもれて。身体の全てが水に溶けるような。そんなカンカクにおそわれる。穴という穴に水が入り、身体と水に境がなくなり、目を閉じていても見えている。音の少ない時間は、冷たくも温かくもない世界で、私は独り、耳だけを澄ましている。そこだけが温もっている。 2011/5/11「水中夢」