☆SS☆ラベンデル(改)
昔々、タンポポ野原に世にも珍しい紫のウサギが住んでいました。
親も兄弟もみんな普通の茶色のウサギでしたが、そのウサギだけが紫色でした。
当然ウサギはみんなに嫌われて、とうとうタンポポ野原を追い出され、独りでとぼとぼ森を奥へと、自分の居場所を探して旅に出ました。
草をかきわけ進んでいくと、パタン、とぶつかったのは1匹のリス。
ウサギは罵声を逃れて逃げようとしましたが、リスは宙に向かってしきりに謝りました。
つられてウサギも謝ってしまいました。
‥‥リスは目が見えませんでした。
‥‥山の彼方のそのまた向こう幸い住むと人の言う
リスは水色の湖を探す旅の途中でした。
森の何処かにあるという、願いを叶えてくれる湖は病を治してくれる。リスはそう言いました。
願いを叶えてくれるのなら、自分の毛色もなおしてくれるかもしれない。ウサギは考え、リスの旅について行くことにしました。
気の合ったウサギとリスは仲良くなって、森を進みました。
互いに心に傷を負っていたからなのか、2匹は互いに思いやる心を知っていたのです。
3日後には、ウサギもリスも互いに相手に信頼をおくようになっていました。
何日も何日も2匹は森を歩き、とうとう水色に光る湖を見つけました。
2匹は恐る恐る湖に入り、身体を洗い、目を洗いました。
‥‥ウサギの紫は茶色にはなりませんでした。
しかし、隣でリスが呟くのが聞こえました。
「‥‥見える」
ウサギは哀しみ、大好きなリスに姿を見られるのが怖くなって逃げ出しました。
後ろで自分を呼ぶリスの声が聞こえましたが、振り向けませんでした。
‥‥あれから、何日たったでしょう。リスには会っていません。
あの日湖から逃げ出してからずっと、ウサギは森を彷徨い歩いていました。
リスと会った日と同じ様に草をかきわけながら歩いていると、パタン、再び誰かとぶつかってしまいました。
「あっ‥‥」
あのリスでした。
「その声は‥」
‥‥ウサギは逃げました。嘲られるのが怖かった。お前はそんなヤツだったのかと、言われるのが怖かったのです。
走って走って、いつの間にか、拓けた場所に出てしまいました。
一面白い花畑。
ムセかえるような強い匂い。
「‥‥」
惨めでした。
白い景色の中に、ぽつんと強烈な紫。お前は他と違うのだとつきつけられた気がしました。
「待って」
追いかけてきたリスがウサギに飛びつきました。
「どうして逃げるんだ、僕ら友達だろう?」
リスの問いかけに、ウサギは知らず知らず泣いていました。
「だって、ぼくは、こんな毛色だから‥‥だ、だって、怖いだろ?紫の毛色だなんて、ヘンだろ?」
涙は後から後からあふれてきます。
「毛色なって関係ないっ!!君は僕の友達じゃないか」
リスも泣いていました。
ウサギはリスの泣き顔に耐えきれなくなり、リスをなぐさめました。
「ぼ、僕が、君を、嫌いになるわけないじゃないかっ」
シャクりあげるリスに、ウサギはどうすればいいのかわからなくて、ただひたすらにリスの頭を撫でました。
心地がついたのか、リスが顔を上げた、と、
「えっ‥‥?」
「‥‥?」
リスの反応にウサギも首を傾げると、リスはウサギを指さして言いました。
「君、真っ白だよ」
「えっ?」
ウサギが自分の身体を見下ろすと。
‥‥驚いた。
紫色だった毛の色が、真っ白になっていました。雪にだって負けないくらいの白に。
「どうして?」
ウサギの問いにリスが自分たちの周りを見渡しながら言った。
「花‥‥」
2匹を囲んでいた花が、白から、美しい紫色になっていました。
まるでウサギの紫と色を交代したように。
「‥‥きれいだね」
放心したように見つめていたリスが。呟きました。
「うん」
「君も」
「‥ありがとう」
生まれて初めてのコトバに、少しどぎまぎしながらウサギは応えます。
「この花の名前、知ってる?」
リスの問いにウサギは少し照れながら、
「うん、ぼくと同じ名前」
「へぇ‥‥この花、ラベンデルって言うんだ」
「うん」
しばらく花を見つめて、2匹は連れだって森へと戻っていきました。
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語尾をかえたくらいですが。
高校生頃の「お話が書きたい」で、書いたお話です。
絵本が書きたかった気がします。
ラベンデルとは、ドイツ語でラベンダーのことですね。
ところで、ネコさんにとっては、ラベンダーの香りは毒だということを知っていますか?
なので、このお話にネコさんを使うことができませんでした。あとは、森と原っぱを舞台にしたかったので、ネコさんは出せなかったんですね。
あたしは無類のネコさん好きです。
イヌさんも好きです。
オウムは少し苦手です。